安全で美味しいものを「楽しく」求めて活動中! NPO法人地の塩食菜くらぶ

地の塩食菜くらぶ

ほんまちひろホームページはこちら
  • HOME
  • Essay
  • 南三陸だより/吉村昭 『三陸海岸大津波』

Essay:箸やすめコーナー・各界の方の連載エッセイです。

南三陸だより/吉村昭 『三陸海岸大津波』
吉村昭 『三陸海岸大津波』
繰り返し襲われる大津波、でもその土地を愛する人達

良書のご紹介:

 吉村 昭著「三陸海岸 大津波」(文春文庫)
 津村節子著「三陸の海」(講談社)

 吉村昭氏は2006年に亡くなっています。奥様の津村節子氏と文壇のオシドリ夫婦と言われた作家夫婦です。書店で吉村氏のこの「三陸海岸 大津波」を見かけ、そのすぐそばに津村氏の「三陸の海」が仲良く並んでいました。
 南三陸とご縁ができてから、地元の方から伺っていた津波の話が気になっていましたので、この2冊を読みました。

 東日本大震災の起こる前に、吉村氏は毎年、田野畑村を訪れていたが、この本をなぜ書くようになったかということをまえがきに次のように記されていました。
「ある婦人の体験談に、津波に追われながらふとふり向いた時、2階家の屋根の上にそそり立った波がのっと突き出ていたという話があった。深夜のことなので波は黒々としていたが、その頂きは歯列をむき出したように水しぶきで白くみえたという。」その話に吉村氏は触発されて、津波の資料を集め体験談をきいてまわるうちに、一つの地方史として残しておきたい気持ちにもなった。・・・・それがこの一書である」

 この「三陸海岸 大津波」は、三陸海岸には昔から繰り返し大きな津波に襲われている事実から、さまざまな記録や、体験者を探し出してまとめています。子どもの作文もあれば、当時の体験者で生存しているお年寄りの話、画家による被災状況、当時の政府や公的機関の対応や動きを資料から記述されています。
 明治29年、昭和8年、昭和35年のチリ地震による大津波が三陸海岸を襲い、大きな被害を受けています。地震は来る、そして津波も襲ってくるとこの本には記録を元にして事実の記録を重ねて述べているので説得力があります。吉村氏はすでに亡くなっていますが、言い伝えの通り平成23年に東日本大震災が起こり、津波に襲われました。
 こういう記録本というのは読みづらいものですが、吉村氏はさすが作家です。この膨大な資料をいくつかのカテゴリーと年代に分け、どの位の高さの津波が来たのか、その時にどのように感じたのか、どれほどに怖かったかという、事実とその時の心理状態も知ることができます。津波がくる前にどんなことがあったのか、大漁につぐ大漁と漁師たちが沸き返っていたこと、地震の後で大きな音を聞いたとか、一般の人達の証言がいくつも出てきます。明治29年から昭和8年までの間、これといった津波災害防止方法は取られていなかったが、各被災県が防災を徹底するために県庁から「地震津波の心得」というパンフレットが配布され書かれていたことと同じことを東日本大震災の後、言われていますが、その教訓を生かされていないということが証され、繰り返す現実に驚かされます。
 
 私自身が2011年5月から何回か被災地を訪れ、いろいろな方にお会いして伺った話の中に、何人もの方からそういう言い伝えを聞いていたと言われました。それでもあれだけの犠牲者が出たことに、どうしてだろうと不思議に思い続けています。その時に印象に残った言葉は、“自分達はこれまでも何回もこういう地震や津波の経験をしているけど、この土地で住むことを捨てようとは思わない。多くの犠牲者を出し、まだ行方知らずの人がたくさんいる。海は恐ろしい。しかし、この海の恵みで我々は生計を立ててきた。やはり自然に感謝し、自然に逆らわず、この地でこれからも暮らすつもり”と。

 吉村氏は東日本大震災を知らずに亡くなっていますが、いずれ、必ず大津波は来ることを予告していました。何回も繰り返す大津波を経験しながらも、その後の大津波から防御できなかった歴史は、防災を怠ったことではなく、人間が予知できるようなものではないということを我々に示しています。それでも覚悟してそこに住み暮らしている覚悟ある人達の記録のように思えました。想定外だったといいますが、人間の浅知恵で自然現象を想定して、きっちりと防災できるなど妄想だと思えます。

 東日本大震災の当日に、津村節子氏は長崎にいて、長崎造船所の史料館に吉村昭コーナー開設のオープニングセレモニーで挨拶している時だったそうです。何回も吉村氏と田野畑村を訪れている津村氏は、多くの方との関わりを書いていますが、村長さんや医師、村の人達との交流やエピソードは、涙ものです。吉村氏とは違った点で、吉村氏の執筆されたその土地やそこに住む人達との関わりは、小説ではなく事実として清々しい日本人の姿が表れています。津村節子著「三陸の海」もいっしょに読まれることをお薦めします。

                             (杉本記)

Login

南三陸のドキュメンタリー映画『波田谷に生きる人びと』が上映中です。民族学の研究のために震災前から波田谷に通っていたのがこの映画の監督です。震災前の暮らしで、ほとんどが震災前の記録です。震災後、監督は辛くて欝になったとのことですが、それを乗り越えて映画を完成させたと聞きました。南三陸を知っている人にとっては、何かを感じるものがあります。(上映は東中野ポレポレは21日まで、他はネットで検索して下さい)(2015/08/13)

People
脇 幸二さん 食品偽装表示の問題
楠目ちづさんさん ピエール・カルダンも絶賛した

一覧

Visit
野菜の研究者 吉田企世子さんと柴海農園を見学 野菜を見て、食べて、納得された吉田さん
青梅のきのこガーデン 椎茸栽培についてお話を聴いてきました

一覧

Essay

一覧

Cooking

5月のお料理のヒントになれば・・・ 美味しいものが出揃う季節です

秋の味噌汁と健康のために玉ねぎ氷のお勧め 最近の書籍とテレビで得た情報です

一覧

Event
久保陽子ヴァイオリンチャリテイコンサート 若き音楽家たちとの共演
久保陽子チャリテイコンサート ご好評の若きピアニストとのコンサートです

一覧


地の塩食菜くらぶとは?

地の塩食菜くらぶ モバイルサイトはこちらから

※モバイルサイトをご覧いただく際の注意点

みんなで食料自給率アップ!FOOD ACTION NIPPON

農林水産省の原発事故による食品への影響を調べるポータルサイトが開設されました。
「福島第一原子力発電所事故による農畜水産物等への影響」