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Essay:箸やすめコーナー・各界の方の連載エッセイです。

地の塩食菜くらぶエッセイ 河上民雄/よき調教師
よき調教師

 今からもう30年以上前になるが、シンガポールの東南アジア研究所の所長サンドゥ博士にお会いしたときのことである。東南アジアが日本に期待する役割は何かという私の質問に対し、博士は東南アジアにとって中国は依然として虎のような存在である、この中国に対してよき調教師であってほしいと答えたのである。私はこれは日本にとってなかなか難しい役割だと感じたことをよく覚えている。
 サンドゥ博士は1990年代に惜しくも亡くなった。
よき調教師になるためには、動物と調教師との間に相手に対する信頼感と尊敬心がなければならない。今日の日中間にそういうものが成立しているだろうか。小泉首相時代にしきりに言われた“政冷経熱”(政治で冷却してもかまわない、経済だけ活発であればそれでよい)を日本が繰り返している間に、中国は格差、民主化、公害などさまざまな課題を抱えながら、一昨年は日本の貿易相手国一位がアメリカから中国に代わり、今年は中国のGDP(国内総生産)が日本を抜いて世界第二位となる。
 博士はa good tamer という言葉を使った。ライオンや虎の場合に用いる。馬の場合はa horse trainerである。もちろんシェイクスピアは『じゃじゃ馬ならし』でtamerを使っている。

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